埼玉大学 生体制御学科 / 生体制御学コース

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生物エッセイ

消化管運動と脳・腸相関

掲載:2011年12月5日

 空腹になると消化管が強く動いて蠕動運動が起こり、お腹が「グー」っと鳴ります(これを腹鳴または腹鳴りと言います)。昼時に腹鳴が起こり、恥ずかしい思いをしたことがある方は多いと思います。私の研究のひとつは、空腹時にどのようなメカニズムで蠕動運動が起こるのかを調べることです。実は、この現象はホルモンが関係していることが知られていて、空腹になると十二指腸からモチリンと呼ばれるホルモンが分泌され、胃から下部小腸へと伝わる蠕動運動が起こります。近年、消化管の運動不全によって多くの機能性腸障害が起こることが知られてきて、消化管の正しい運動は我々の健康維持に非常に大切であることが分かってきました。しかし、その作用機構の全体像はまだ明らかにされていないことから、私はスンクス(食虫目、モグラの仲間)という小型実験動物を用いてモチリンを含む消化管から分泌されるホルモンの研究をしています。ホルモンというと、下垂体から分泌される成長ホルモンや甲状腺からの甲状腺ホルモン等が思い浮かばれますが、消化管からもたくさんのホルモンが分泌されて消化管運動を調節していることが知られています。これらの消化管ホルモンは、消化管だけでなく脳にも働いていることが最近分かってきました。今まで、脳は司令塔として体全体を支配しているとの考え方が一般に受け入れられてきましたが、体(末梢)からは我々の意識に上らない様々な情報が神経やホルモンによって脳へと伝えられ、それらが脳で統合されて、行動や消化管の運動等を積極的に調節していると考えられるようになってきました。つまり、脳と体(末梢)は相互に調整しあって生命活動を行い、全身の恒常性(ホメオスタシス)を維持しているのです。中でも、多くのホルモン産生細胞と神経細胞を持っている消化器官は、脳との密接な情報連絡を行っており、その間には「脳-腸相関」とよばれる制御系が存在します。私はこの脳-腸相関に基づく消化管運動機構を明らかにする目的で一連の研究も行っています。その結果、モチリンは胃に存在する筋間神経叢と脳へ作用し、胃と脳の協調作用によって空腹期収縮が起こることが明らかになりつつあります。この研究を進めることで、機能性腸障害の病気の状態の理解や治療薬の開発に必要な知識の獲得が期待できます。

細胞制御学研究室坂井 貴文 教授

脳-腸相関

図. 「脳-腸相関」脳と消化器はお互いに調節しあう。

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